がんと診断を受けただけで多くの方が動揺されます。それまでの平穏な日々からいきなり不安となり、将来の事が心配となります。そんな状態の患者さんがさらに放射線治療を受けるように言われると、その動揺は最高潮に達すると思います。しかし心配しているだけではがんは治りません。 当クリニックでは患者さんとご一緒に、治療について今後の闘病について考えていきたいと思っています。 これからお示しする治療の流れを前もって見ておかれると多少の不安の解消になると思います。
今まで診療を受けられた施設からの診療情報が治療方針の決定に不可欠です。さらに問診や診察を行い、どんな治療が最適かを決めます。このため追加検査が必要となることもありますし、依頼された先生方とご相談することもあります。場合によっては手術や抗がん剤療法など他の治療をお勧めすることもありますし、治療を行わずに経過と観察するということもあります。 今までに行った治療の経過や時期なども重要な情報です。また以前に放射線治療を受けたことがある場合は、その情報を入手しないと治療が開始できないこともあります。 放射線治療を行うことになると、その方法や副作用(有害事象)を詳しく説明し同意書に署名をいただきます。 この後に治療スタッフが集まって治療方法のためのカンファレンスを行い、治療法の決定と連絡不足によるトラブルが起きないような申し送りをいたします。
放射線治療を行うための検査や準備が必要となります。計画した部位に毎回毎回きちんと照射することが肝要です。いつも同じ姿勢で照射できるようにするため、固定具を作成することもしばしばあります。 治療する姿勢(ベット上に背臥位)を決めてCTを撮影します。これからの毎回の照射時にもこれと同じ姿勢を取っていただきます。この時に体に基準の線を書き入れることが一般的です。また、顔写真を撮らせていただきます。これは患者さんを取り違えて照射をしないためのチェックの一つで、日本放射線腫瘍学会からも実施を推奨されています。
撮影されたCT画像をもとに照射する部位や線量・照射方法などを決定します。これを治療計画と呼んでいます。この作業は患者さんなしで主に治療計画装置(コンピューター)上で行います。これには医師・放射線技師・医学物理士がそれぞれの役割を果たします。 照射回数は1週間に5回の照射を疾患に応じて5から8週間(25から40回)行うのが一般的ですが、ピンポイント治療(定位照射)の場合は1回ということもあります。
初回治療に先立ち体に照射位置情報のための線を書き込みます。場合によっては体でなく固定具に書き込むこともあります。そして照射装置(リニアック)から出るX線で照射する部位(照射野)の確認のための写真を撮ります。これが最も正確に照射範囲を示します。 この画像(リニアックグラフィ)と治療計画時に作成した写真(DRR)とを照合し、問題が無いことを確認して照射開始となります。したがって初回の治療は時間がかかります。高精度放射線治療の場合には毎回の照射に先立ち照合のためCTなどを撮影することもあります。 2回目以降の治療室への入室から退室まで治療時間は10分以内です。高精度放射線治療の場合には処置が必要となることがあり、その場合は受付から照射終了まで1時間以上かかることもあります。 照射期間中は週に1-2回の診察を行います。 一般に副作用は照射期間の中盤から起こります。不安なことは何でも聞いてください。また医師は診察日以外でも毎日常駐しております。
放射線治療の副作用は照射終了から終了後1週間ほどでピークとなることがよくあります。したがって照射終了1週後の時点で再診を行います。その後の経過も治療効果の判定に重要です。患者さんに行った治療が本当に役に立ったのかを判定し今後の治療に生かしたいと思います。